Q.大腸内視鏡に対するこんなお悩みはありませんか?
- 下剤が口に合わず飲めない、または量が多すぎて全部は飲み切れない
- 下剤を飲むことに抵抗がある
A.こうしたお悩みや不安がある方に向けて、当院では下剤を飲まずに受けられる大腸内視鏡検査を行っています。
下剤を飲まない大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査では、見落としをゼロに近づけるため、大腸をきれいにしておく必要があります。通常は前処置として1.5L〜2Lの下剤を飲んで腸の中をきれいにしています。実際、これほど大量の水分を2時間程度で飲み切るのは大変です。また味が口に合わない場合には、飲むこと自体が大きな苦痛になります。 当院ではこうした患者様への負担を軽減するために、下剤を飲まずに受けられる、大腸内視鏡検査を行っています。 嫌な味を我慢しながら大量に飲む必要がありません。下剤を飲まない大腸内視鏡(下剤注入法)は、どこの医療機関でも、受けられる訳ではありません。その理由は、保険診療では下剤注入法という方法が算定できないこと、また大腸内視鏡用洗浄剤(下剤)は患者さん自身が自力で飲むことを想定して製造販売されているためです。
急激に腸管に下剤を注入することで、腸管内圧の上昇に伴い腹痛などが起こる可能性もあるため、事前に腸閉塞の有無と全身状態を確認し、検査当日は入院で行っています。
下剤を飲まずに受けられる大腸内視鏡検査には次の2種類の方法からお選びいただけます。
選択肢1:内視鏡的洗浄液注入法
内視鏡的洗浄液注入法は胃カメラ検査の際にスコープから下剤を直接注入し、その後、大腸カメラ検査を行う方法です。
そのため、胃カメラ検査と大腸カメラ検査を同日に受けて頂く必要があります。
胃カメラで下剤を注入後、1~2時間(通常2~3時間)ほど排便を繰り返し、腸内がきれいになったら大腸カメラ検査を受けていただけます。
大量の下剤を2時間かけて飲む必要がないため、準備が短時間で済みます。
メリット
- 胃に直接下剤を注入するため、下剤の味を感じることがない。
- 胃に直接下剤を注入するため、下剤を”飲み込む”動作がなくなり楽。
- 大腸カメラ検査の準備時間が非常に短くなる(下剤服用から排便完了まで)。
- 寝ている間に胃カメラと下剤の注入も終わり楽。
デメリット
- 胃カメラ検査と大腸カメラ検査を同日に受けなくてはいけない。
- 胃内視鏡検査が保険適用されないので、ドックの胃内視鏡検査料金が必要となる。
- 年齢・併存疾患に制限がある(高齢の方や便秘でお悩みの方は外来診察時にご相談ください)。
- 急激に下剤が注入されるため腹痛などを起こすこともあります。
- 鎮静剤が効きすぎると、フラつくこともあります。
選択肢2:鼻チューブ法
鼻から細いチューブを挿入し、胃に直接下剤をゆっくり流し込みます。
下剤が舌に触れないため、下剤のいやな味を感じることはなく大量の液体を飲み込む苦痛もありません。
鼻からチューブを通すのは一見痛そうに聞こえますが、チューブ自体は細く、挿入する際も少量の麻酔を使用するため痛みを抑えるように配慮しております。
メリット
- 下剤が舌に触れることがないため、下剤の味を感じることがない。
- 胃に直接下剤を注入するため、下剤を”飲み込む”動作がなくなり楽。
- 鼻から細いチューブを挿入するため、えずきが少ない。
- 内視鏡的洗浄液注入法と比較すると費用が安価(費用:約3,300円)
- 胃カメラ検査を受ける必要がなく、注入速度を調節できる。
- 鎮静剤を使用しないので、フラつくことがない。
デメリット
- 鼻が敏感な人は、チューブを通す時に抵抗を感じる場合がある。
- 鼻中隔弯曲症や鼻腔内に浮腫がある方は行えない。
- 内視鏡的洗浄液注入法と比較して、排便時間が長くなる。
- キシロカイン(局所麻酔薬)を使用するため、キシロカインアレルギーがある場合は行えない。
- 材料費として大腸カメラ検査費用とは別に、約3,000円(税抜)が必要です。
- まれにチューブ挿入の際に気管へ誤挿入し誤嚥性肺炎を起こす可能性もある。
- 自分で下剤をチューブから注入するため少し手間がかかる。
検査の流れ
※当院では、安全を考慮し入院で行います。何か症状があった場合にはすぐにスタッフへお知らせください。
Step.0事前診療
事前診察を受けて頂き、高度の便秘がある場合には下剤による治療を行います。内視鏡検査3日前より、便秘薬を服用開始します。これらの薬剤が効きすぎる、腹痛が生じるときには自己中止または減量していただいて構いません。
Step.1前日入院
検査前日に入院して頂き、検査食と下剤の内服を行います。
Step.2検査当日
内視鏡的洗浄液注入法
検査着にお着替えして頂き、午前中に、胃カメラを行います。
ウトウト眠っているような状態で検査を行い、最後にスコープを通じて十二指腸に下剤を注入します。胃カメラ検査を終えたら10~20分程で目が覚めます。
排便は覚醒後すぐに始まる方から1時間ほどかかる方までいらっしゃいますが、排便開始後、約2時間程で 落ち着きます。気になることがありましたらお気軽にスタッフにお尋ねください。
鼻チューブ法
朝回診後に、医師が鼻から細いチューブを挿入します。
痛みや違和感ができるだけ起きないよう、麻酔薬(キシロカインゼリー)を使用して、きめ細かく配慮しながら挿入します。胃まで到達したら胃液の確認とレントゲンにより胃内にチューブがあることを確認します。
確認後、下剤をゆっくり注入しはじめ、注入開始後30~60分ほどで最初の排便が始まり、2時間ほどで落ち着きます。
※いずれの方法も便や残渣があると検査の精度が劣化しますので、看護師が便の状態を適宜確認し、注入だけでは洗浄効果が十分でないと判断した場合には、追加で浣腸を行うこともありますのであらかじめご了承ください。
Step.3大腸内視鏡検査
排便が落ち着き大腸の洗浄が済みましたら大腸内視鏡検査を行います。
寝ている間に検査を行い、検査の所要時間はおおむね20~30分程度です。
しかし、多数のポリープを切除する場合などには、すべてのポリープを切除するために1時間を超えることもあります。
検査時間の長短に関わらず、検査中は鎮静した状態で受けられますので、たとえ検査が長くなろうとも安心して検査を受けていただけます。
Step.4検査後
検査終了後、ぼーっとしていますがすぐに目が覚めます。覚醒を確認後、病棟へ移動し、しばらくベッド上でお休みいただきます。翌日、朝の回診で検査画像を用いて検査結果をわかりやすく説明いたします。質問がありましたら、お気軽にお尋ねください。
下剤を飲まない大腸内視鏡Q&A
1. 1日で下剤を飲まない大腸内視鏡は終わるのですか?
所要時間は、4‐6時間ほどですので、1日で胃カメラ・大腸カメラが終了します。 しかし、下剤を飲まない大腸内視鏡でも、事前診察が必要です。
2. 高齢者でも下剤を飲まない大腸内視鏡は受けられますか?
90歳以上の方でも下剤を飲まない大腸内視鏡を受けることはできます。しかし、腎臓、肝臓、心臓、肺などの呼吸器に疾患をお持ちの方の対応は難しいことがあります。
3. 下剤を飲まない大腸内視鏡は、どのように申し込むのですか?
原則的に、一度外来を受診していただくことになります。その際に、相談の上、検査日を決めていただきます。もしお急ぎであれば、担当医と相談ください。
4. 下剤を飲まない大腸内視鏡は、危険ではないのですか?
危険を回避するために、事前に医師の診察を受けていただきます。ただ、下剤を注入しても吐き出してしまう方や腹痛のある方は、途中で中止する可能性もあります。
5. 下剤を注入してから便意を感じるまでの時間は、どのくらいですか?
概ね10分から20分くらいです。鎮静剤を投与した患者さんは5分から10分で目が覚めますので、トイレに困る可能性は低いと思われます。
6. 下剤を注入してから、注意することはありますか?
下剤を注入した後、歩いたり、立ち上がったりすると、腸が活発になり下剤の洗浄効果が高まりますので、よく動くようにしてください。しかし胃カメラで注入した場合には鎮静剤の影響でふらつくこともあるので、慎重に動いていただくこともあります。
7. 入院をしなければいけませんか?
急激に下剤が注入されることで、腸管内圧の上昇に伴い、腹痛などが起こる可能性もあるため、安全を考慮し、当院では、原則入院での検査としております。
8. 費用はどのくらいかかりますか?
下剤を飲まない大腸内視鏡検査の費用は、基本的に、通常の大腸内視鏡検査の費用と 変わりません。ただし、内視鏡的洗浄液注入法の場合には胃内視鏡検査費用(約10,000円)、また鼻チューブ法では、材料費として別途約3,300円が必要です。
費用
1割負担 | 3割負担 | 自費 | |
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通常の大腸内視鏡検査 | 約2,500円 | 約7,500円 | |
鼻チューブ法 | 約5,800円 | 約10,800円 | +3,300円 |
内視鏡注入 | 約12,500円 | 約17,500円 | +10,000円 |
1割負担 | 3割負担 | 自費 | ||
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短期滞在手術等基本料 | 2cm未満 | 12,739円 | 38,217円 | +注入法代 |
内視鏡的大腸ポリープ切除 | 2cm以上 | 15,599円 | 46,797円 | +注入法代 |