鼠経ヘルニアの手術のリスクは?手術の成功率と合併症・後遺症

鼠経ヘルニアの手術のリスクは?
手術の成功率と合併症・後遺症

鼠経ヘルニアの唯一の治療方法である“手術”。鼠経ヘルニアを治すには、手術をするしかないとわかっていても、手術が成功するのか、合併症や後遺症がおこらないかが心配で二の足を踏んでいる患者さんもいらっしゃいます。

鼠経ヘルニアの手術は、身体への負担も少なく成功率も高いのですが、合併症や後遺症のリスクはゼロではありません。

本記事では、鼠経ヘルニアの成功率や合併症・後遺症を専門医がわかりやすく解説します。鼠経ヘルニアの手術の成功率や、合併症・後遺症について知りたい方は、ぜひ本記事をお読みください。

鼠経ヘルニアの治療について知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

鼠経ヘルニアの手術のリスク

鼠径ヘルニアの手術は、皮膚の表面を小さく切ります。心臓や脳の手術と比べると、身体への負担も少なく、比較的合併症などもおこりにくいリスクの低い手術です。

しかし、身体の負担が少ないとはいえ手術をおこなうのですから、麻酔や手術器具へのアレルギー、予測できない出血や合併症・後遺症を発症する可能性はゼロではありません。

日本内視鏡外科学会の調査では、1990年から2019年までに登録された436,559例の鼠径ヘルニアの手術のうち、合併症が6939例(1.6%)報告されています。
出血や感染、再発などさまざまな合併症が報告されているのです。

鼠経ヘルニアの手術の成功率は?失敗しにくい手術方法はある?

内視鏡外科学会の調査では、鼠経ヘルニアの手術をしたあとにまた鼠径ヘルニアになってしまった(再発した)割合は1〜9%と報告されています。

実は、鼠経ヘルニアの手術の成功率は、手術方法で異なる報告があります。
TAPP法は1%、TEP法は2%、鼠径部切開法は9%と手術方法によってばらつきがあります。

その理由を簡単に説明すると、若手外科医を含めて、多くの施設で取り入れられているのが、鼠径部切開法になり、鼠径部切開法にも様々あります。結果的に総数が増えて、統計上再発が高いように見えてしまいます。修練医師やヘルニア専門施設でのTAPP、TEP、鼠径部切開法の、統計上再発率が高くなってしまっているのです。

ちなみに、ベテランの外科医ではTAPP、TEP、鼡径部切開法の成功率には差がないと報告されていますから、手術方法で鼡径ヘルニアの成功率には差がないことを知っておくとよいでしょう。

再発率についてですが、一般的な施設ではヘルニア再発率は2%程度。当院のようなヘルニア専門病院での再発率は1%に満たないと報告されています。当院では、再発や感染など手術後の合併症・後遺症をおこしにくい『TEP法(腹腔鏡を用いた腹膜前到達法)』と『Direct Kugel法(前方到達法)』という手術方法を取り入れています。

手術方法の選択にあたっては、患者さんお一人おひとりの鼠径ヘルニアの程度だけでなく、年齢や持病などさまざまな状況を鑑みて、患者さんのリスクを最小限にできるよう務めています。鼠径ヘルニアの手術の成功率が気になる方は、ぜひ当院へご相談ください。

鼠経ヘルニアの手術の合併症・後遺症

鼠径ヘルニアの手術の合併症・後遺症は、再発以外にも以下のようなものがあります。

  • 再発
  • 痛み
  • 出血
  • 感染
  • 漿液腫
  • 消化管損傷・穿孔

順に解説します。

再発

再発とはせっかく手術をしたのに、また鼠径ヘルニアになってしまう状態です。鼠径ヘルニアの手術では、弱っている鼠経部の筋肉を縫い縮めたり、パッチという人工的な膜を縫い付けて腸が飛び出ないようにします。しかし、その縫い縮めや縫い付けが不十分だったりすると、再発してしまうことがあります。

痛み

手術ですので手術直後や退院してすぐに、全く痛みがないということはほとんどありません。けれどもほとんどの患者さんは、痛み止めの内服で痛みを緩和でき、日常生活にはほとんど支障がありません。

ごくまれに、手術後半年たっても鼠経部やその周囲の痛みや違和感が続いたり、一度よくなった痛みがまた出現したりすることがあります。その程度は、ごくごく軽い物から我慢できないものまで患者さんお一人お一人ことなります。
手術後も長期間にわたって続く痛みの原因は、手術で神経にダメージを与えていたり、鼠径ヘルニアの穴をふさいだメッシュの圧迫や感染などさまざまです。痛みを緩和するために、メッシュを取り除く手術をすることもあります。

出血

鼠経部には、心臓から足に血液を送るために大切な血管がたくさん通っています。血管を傷つけないように慎重に手術をおこないますが、ごくまれにたくさん出血してしまい、血を止めるための処置が必要になることがあります。
また、血液をサラサラにする薬を飲んでいると、血管を傷つけていなくても血が止まりにくくなってしまうことがあります。

感染

鼠経部を直接切開する方法は、下腹部の毛(陰毛)に近い部分の皮膚を大きく切るため、毛や皮膚の雑菌が創部に影響を与え、感染をおこすリスクが高いといわれています。
しかし腹腔鏡手術では傷は小さく、鼠経部から離れた部分を切るため、感染がおこりにくいといわれています。

漿液腫(しょうえきしゅ)

漿液腫は、もともと鼠経ヘルニアがあったスペースが空いて、そのスペースにリンパ液などの滲出液・漿液が溜まってしまった状態です。手術後〜術後約2週間程度で少しずつ鼠経部がふくらみ漿液腫ができますが、数週間〜数か月で徐々に吸収されてなくなります。鼠経部が膨らんだからといって、ヘルニアが再発したわけではありませんし、痛みはなく、自然によくなるため、様子をみることがほとんどです。

消化管損傷・穿孔

消化管損傷(しょうかかんそんしょう)は、大腸や小腸などの消化管に傷をつけてしまった状態です。穿孔(せんこう)は、消化管に穴があいてしまった状態です。
消化管損傷や穿孔は、鼠経ヘルニアが嵌頓して腸管を傷つけてしまったり、手術で腸を戻すときに腸を傷つけたり、腹腔鏡でお腹のなかを見やすくするときに傷をつけてしまったり、さまざまな状況でおこる可能性があります。いずれにせよ傷つけたり、穴があいてしまったりした腸を元に戻さないと、腹膜炎をおこしたり命にかかわることがあるとても危険な合併症なのです。

つくば市で後遺症の少ない鼠経ヘルニアの治療をするなら
筑波胃腸病院へ!

しかし、手術をしないことでさまざまな合併症を発症するリスクもありますから、信頼できる医療機関で適切なタイミングで手術をすることをおすすめします。

つくば市にある筑波胃腸病院では、2泊3日で鼠径ヘルニアの手術をおこなう最先端の短期滞在手術にも対応しています。専門的な知識と技術を持つ医師が、診察から手術・アフターフォローまで一貫して対応しています。

つくば市・近隣地域で、鼠径ヘルニアの手術をご検討の方は、ぜひお気軽に当院へお問い合わせください。

鼠経ヘルニアの治療について、もっと知りたい方はこちらのページをご覧ください。

一般診療
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鈴木 隆二
鈴木 隆二監修 鈴木 隆二
筑波胃腸病院 理事長
経歴
  • 聖マリアンナ医科大学 卒業
  • 東京女子医大初期臨床研究センター 研修医
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 錬士
  • 東京女子医大大学病医学 研究科 博士課程修了
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 膵臓外科 助教
  • 医療法人筑三会筑波胃腸病院 理事長
関連ページ
参考資料

日本内視鏡外科学会 内視鏡外科手術に関するアンケート調査 - 第15回集計結果報告-
https://www.jses.or.jp/modules/notice/index.php?content_id=48