鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?手術をしない危険性を専門医が徹底解説

鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?
手術をしない危険性を専門医が徹底解説

鼠経ヘルニアを完治させる唯一の治療方法は手術です。しかし手術が怖い、受けたくないと鼠経ヘルニアを放置してしまう患者さんは少なくありません。鼠経ヘルニアを放置していると、時には緊急手術が必要になったり、命にかかわるような合併症が現れる可能性があります。本記事では鼠経ヘルニアを放置するとどうなってしまうのか、鼠経ヘルニアの手術をしない危険性を専門医がわかりやすく解説します。鼠経ヘルニアの治療について詳しく知りたい方、手術を勧められたが迷っている方は、ぜひ本記事をお読みください。

鼠経ヘルニアを放置するとどうなる?

力を入れたり立っていたりすると、足の付け根”鼠経(そけい)”がポッコリと膨らむ鼠経ヘルニア。小さなお子さんから高齢者まで、誰でも発症する可能性がある病気で、患者さんの90%以上が男性で50歳以上の方が特に多いといわれています。

鼠経ヘルニアを完治させる唯一の治療方法は”手術”です。しかし、手術と聞くと恐怖心や不安感などから手術を先延ばしにする方が少なくないのですが、鼠経ヘルニアを放置すると以下のような合併症をおこす可能性が高くなります。

  • 鼠経ヘルニアの嵌頓
  • 腸閉塞
  • 腸管壊死
  • 腹膜炎

それぞれの合併症について、順に解説します。

鼠経ヘルニアの嵌頓(かんとん)

鼠経ヘルニアの嵌頓とは、飛び出した腸が鼠経にできた筋肉の穴に入り込んでしまって締め付けられて、お腹の中に戻らなくなった状態です。
普段はやわらかく、押すと引っ込むはずの鼠経ヘルニアが引っ込まず、カチカチに硬くなったり、赤黒くなったり激痛を伴ったりします。

嵌頓を放置していると、はまり込んでしまった腸に十分な血液や酸素が送り込まれなくなって、腸が壊死して最悪の場合、命にかかわることがあります。

腸閉塞(ちょうへいそく)

腸閉塞とは、腸が詰まってしまった状態です。普段は大腸の中にある便や腸液は肛門に向かって流れていますが、鼠経ヘルニア嵌頓すると流れが滞り、流れが詰まって腸閉塞の状態になります。鼠経ヘルニアが原因で腸閉塞になると、鼠経ヘルニアの膨らみの痛みや違和感以外にも吐き気、お腹の張りや痛みなどを感じます。

腸管壊死(ちょうかんえし)

腸管壊死とは、なんらかの原因で腸の血流や栄養が途絶えて、腸の組織が死んで腐ってしまった状態です。鼠経ヘルニアの嵌頓を長時間(通常は12時間程度)放置していると、はまり込んだ腸に血液がうまく流れなくなり、最悪の場合腸管壊死をおこすことがあります。腸管壊死をおこすと、腸の中身や毒素がお腹の中にばらまかれて、激しい腹痛や吐き気が生じます。この段階で適切な治療を開始しないと、最悪の場合命にかかわる可能性があります。

腹膜炎(ふくまくえん)

腹膜炎とは、お腹の中にある胃や肝臓・大腸・小腸などの臓器をおおっている腹膜という膜に炎症がおこった状態です。
鼠経ヘルニアの嵌頓で腸管壊死をおこすと、腸の中身や毒素がお腹の中にばらまかれて、腹膜に炎症がおこり腹膜炎を発症します。腹膜炎になると、おなかに我慢できないくらいの痛み・吐き気・嘔吐・発熱を伴い、最悪の場合命にかかわる危険性があります。

鼠経ヘルニアの手術はいつ頃おこなう?

鼠経ヘルニアの手術はいつ頃おこなうのがよいのでしょう。

“手術はできるだけ先延ばしにしたい”と考える患者さんも多いのですが、当院では鼠経ヘルニアの膨らみに気付いたり、違和感を覚えたりしたら手術をおすすめしています。

その理由は、鼠経ヘルニアの膨らみが小さいほうが手術の傷は小さくて済みますし、術後の痛みも軽くなる傾向があるからです。

手術を先延ばしにして鼠経ヘルニアが嵌頓してしまうと、強い痛みだけでなく、緊急入院・緊急手術の可能性が高くなります。計画的に手術をするよりも、入院期間が長くなったり、入院費がかさんだりしてしまいます。さらに“いつか嵌頓してしまうかも”という、心理的な負担を抱える事になってしまいますから、計画的な手術がおすすめです。

鼠経ヘルニアの手術方法

鼠径ヘルニアの手術は、TEP法・TAPP法・Direct Kugel法の3つの方法があります。

鼠径ヘルニアの手術は、開腹手術と腹腔鏡手術に分けられます。さらに開腹手術においては、人工物であるメッシュを使用する手術としない手術と大きく分けられます。
当院では患者さんの体の負担を最小限にし、感染や再発を回避するために開腹手術ではMarcy法(メッシュを使用しない方法)、Direct Kugel法(メッシュを使用する方法)を。腹腔鏡手術ではTEP法という専門性の高い鼠径ヘルニア手術を施行しております。

TEP法

TEP(テップ)法は腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニアの手術方法で、腹壁内(お腹の外側)で人工補強材(ポリプロピレン製メッシュ)を用いてヘルニアの穴を閉じる方法です。腹腔鏡でおこなうため体の負担は少なく、1~3㎝くらいの傷が3か所できます。

TAPP法

TAPP(タップ)法も腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニアの手術方法ですが、TEP法とはことなりお腹の中(腹腔内)で手術操作をおこないます。傷の大きさはTEP法と変わりませんが、お腹の中で手術操作をおこなうため、術後の痛みが強くなったり、腹膜の癒着がおこるリスクが高いため当院ではおこなっていません。

Direct Kugel法

Direct Kugel法は人工補強材(ポリプロピレン製メッシュ)で穴の開いている部分を広く覆って補強してヘルニアの穴を閉じる方法です。手術ではお腹を1か所、3~4㎝くらい切開し、開けた穴から直接人工補強材を挿入し鼠経ヘルニアの穴を閉じます。

鼠経ヘルニアの治療をするなら筑波胃腸病院へ!

鼠経ヘルニアは手術で完治する病気で、手術をしないとさまざまな合併症をおこす可能性が高いため適切な時期の手術をおすすめしています。

つくば市の筑波胃腸病院では、2泊3日の短い入院期間で手術を受けられます。週末に入院・手術することで仕事や学校への影響も最小限にできます。

つくば市や近隣地域で鼠経ヘルニアの手術を希望される方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。

一般診療
8:45〜12:00 ×
15:00〜17:30(受付17:00まで) × ×

鈴木 隆二
鈴木 隆二監修 鈴木 隆二
筑波胃腸病院 理事長
経歴
  • 聖マリアンナ医科大学 卒業
  • 東京女子医大初期臨床研究センター 研修医
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 錬士
  • 東京女子医大大学病医学 研究科 博士課程修了
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 膵臓外科 助教
  • 医療法人筑三会筑波胃腸病院 理事長
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参考資料

日本内視鏡外科学会 内視鏡外科手術に関するアンケート調査 - 第15回集計結果報告-
https://www.jses.or.jp/modules/notice/index.php?content_id=48

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